古本屋の殴り書き

書評と雑文

遺伝子のユニークな構造/『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ

『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
『しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』レナード・ムロディナウ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
・『心感覚(シンかんかく)』ノ・ジェス

 ・ただ気づくだけで健康状態が一変する
 ・遺伝子のユニークな構造
 ・意識が体を変える
 ・分析脳(左脳)の弱点
 ・瞑想とは

・『瞬間ヒーリングQEのすべて キンズロー・システム実践ガイドブック』フランク・キンズロー
『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・『クォンタム・リヴィングの秘密 純粋な気づきから生きる』フランク・キンズロー
・『ユーフィーリング! 内なるやすらぎと外なる豊かさを創造する技法』フランク・キンズロー

悟りとは
必読書リスト その五

 小さな遺伝子はユニークな構造を持っている。体内の細胞の核からDNAを取り出して伸ばしてみると、それは約6フィート(約1.8メートル)にも及ぶ。一人の体内のすべての細胞の核からDNAを全部取り出して伸ばしてつなげると、その距離は地球から太陽まで150往復することになる。しかし、地球に生きる約70億の人類全員の体内のDNAを取り出して全部丸めても、米粒ほどの大きさにも満たない。

【『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ:東川恭子〈ひがしかわ・きょうこ〉訳(めるくまーる、2021年/原書、2014年)以下同】

 殆どの人の身長より長いわけだな。驚きの事実だ。私の体をあらしめているタンパク質の形はこれらの紐(ひも)が決めているのだ。しかも、全人類のDNAを集めても米粒ほどの大きさにもならないというのだ。これではハードディスクが束になっても敵(かな)わないよ。

 DNAと遺伝子の違いがわからない人も多いだろう。私もわからん(笑)。遺伝子関連の本は10冊以上読んできたがピンとくるものがなかった。

DNA、染色体、ゲノム、遺伝子…違いがちゃんとわかる解説 | biology tips - 高校生物のワンポイント解説

 上記ページに書かれているのが「狭義の遺伝子」である。で、先ほど書いた「私の体云々」が「広義の遺伝子」となる。

 DNAの分子構造を発見した一人であるジェームズ・ワトソンは「遺伝子が人のすべてを決定している」と1970年に主張したが、既に却下されている。遺伝子が発現するか抑制するかは決まっていないのだ。しかも、遺伝子は秒単位で変化することがわかっている。

 最新の研究によると、遺伝子の約90%が外的環境からの信号に連動して活動することが分かっている。もし私たちの【経験】がかなりの割合の遺伝子を活性化するのなら、私たちが持って生まれた天性も環境によって変わり得るということだ。

 外部からの刺激によって感覚が変わった経験は誰にでもあるだろう。それは数行の詩であったり、偶然耳にした一曲であったり、たまたま目にした絵であったりする。自然から受ける影響も大きい。荘厳な夕日や寒気の中で映える星々を見る時、我々の心は粛然とした沈黙に覆われる。感動の深さが人生の色彩を変える。

 最新の研究によると、人は一代で遺伝子を書き換えることができる。遺伝子の進化の過程というものは何千年とかかる半面、遺伝子発現は行動変容や新しい学習体験があればものの数分で変化し、それは次の世代に引き継がれることもある。
 遺伝子のイメージとして、人が生まれる前に厳かな儀式で石板に刻まれた運命の筋書きのように考えるのではなく、膨大な暗号情報の貯蔵庫、あるいはたんぱく質発現の可能性に関する巨大な資料室のように考えるといいかもしれない。とはいえ、この貯蔵された情報を使うために、企業が倉庫から商品をオーダーするようなわけにはいかない。それはまるで、貯蔵庫に何が入っているのか、またどうすればアクセスできるかも不明のため、貯蔵庫が持つ可能性のごく一部しか活用できていないようなものだ。実際、私たちが使っているのは、DNAの1.5%に過ぎず、残りの98.5%は体内に眠ったままでいる。

 つまり、生物は遺伝子を【使って】、それぞれが何らかの役割を果たしているのだろう。中には遺伝的な病気や障碍(しょうがい)で苦しむ人もいることだろう。それでも尚、人類全体に資することは間違いない。

 東川恭子の訳文は時折拙くなる悪癖がある。「取り出して伸ばして」など。