古本屋の殴り書き

書評と雑文

ただ気づくだけで健康状態が一変する/『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ

『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス
『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
『しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』レナード・ムロディナウ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
・『心感覚(シンかんかく)』ノ・ジェス

 ・ただ気づくだけで健康状態が一変する
 ・遺伝子のユニークな構造
 ・意識が体を変える
 ・分析脳(左脳)の弱点
 ・瞑想とは

・『瞬間ヒーリングQEのすべて キンズロー・システム実践ガイドブック』フランク・キンズロー
『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・『クォンタム・リヴィングの秘密 純粋な気づきから生きる』フランク・キンズロー
・『ユーフィーリング! 内なるやすらぎと外なる豊かさを創造する技法』フランク・キンズロー

悟りとは
必読書リスト その五

 一方それらの研究と並行して、患者の物事の捉え方、認識、信念の影響を調べる研究は近年の心身医療研究を引っ張る存在となり、エクササイズが体にいいと言(ママ)った一見具体的なことでも、信じることによって効果が向上することが分かっている。2007年にハーバード大学の心理学者アリア・クラム博士とエレン・ランガー博士がホテルのメイド84名に対して行った研究はその代表例と言える。

 実験を始める前の時点で、メイドが職務の一環として行うルーティンワークが、米国公衆衛生局長官の推奨する1日のエクササイズ量(60分)を上回っていることを、被験者であるメイドは誰も知らなかった。実際被験者の67%が定期的に運動をしていないと答え、37%はまったく運動をしていなかった。このヒアリングの後、クラムとランガーはメイドたちを二つのグループに分けた。
 第1グループには、メイドが通常の労働時間内に燃焼するカロリー量に相当する活動レベルは十分な運動量に達すると説明した。第2グループには何も説明を行わなかった(このグループは第1グループとは異なるホテルに勤務しているため、相互に会話することはない)。
 1か月後、第1グループは通常業務以上の運動をせず、食生活も変えずに体重が平均2ポンド(約1キログラム弱)減少し、体脂肪率最高血圧は約10%減少した。第2グループは、第1グループとまったく同じ通常業務をしたが、何の変化もなかった。

 この実験の少し前にケベックで行われた研究でも同様の結果が現れた。若い男女48名が二つのグループに分けられ、それぞれ1回90分、週3回のエアロビクスエクササイズを10週間継続して行った。インストラクターは第1グループに、これはエアロビクス能力と心理状態を向上する目的で行う実験だと説明した。10週間後、両グループともにエアロビクス能力の向上が見られたが、良好な心理状態の目安である自己肯定感が著しく向上したのは、第1グループだけだった。
これらの結果が示すように、私たちは、ただ気づくだけで、自分の体や健康状態に重要な物理的効果を及ぼすことができる。私たちが学ぶことや、経験することをどんな言葉で定義するか、また提示された説明にどんな意味づけをするか、などがすべて私たちの意志に影響する。何をしていても、その行為に強い意志を載せると、その効果は自然に拡大していく。

 つまりやろうとすることが何か、そしてなぜやるのかがわかると、どのようにやるか、がどんどん楽に効率よくできるようになる。

【『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ:東川恭子〈ひがしかわ・きょうこ〉訳(めるくまーる、2021年/原書、2014年)】

「これらの結果が示すように」の行頭に空マスがないのは原文ママ。「言う」「分かる」の漢字の使い方に違和感を覚えた。久し振りに「めるくまーる社」の本を読んだが、やはり二流出版社か。ひょっとすると、日本のものづくり文化が劣化してきた可能性もある。私の憂(うれ)いを共有する出版人のありやなしやを問いたい。

 読書中である。500ページの大冊。必読書に入れるかどうかは読み終えた時点で判断する。

 プラシーボとは偽薬効果である。昨今は「プラセボ」と表記することが多い。新薬の認可を受ける際に必ず二重盲検テストが行われるが、偽薬でも効果が見られるケースが予想以上に多いことは知っていた。

 100%のプラシーボ効果が認められているものに、「高価な薬は効く」ことが知られている。現代人のマネー信仰を裏づけるような話ではある。

「鰯(いわし)の頭も信心から」という言葉がある通り、あらゆる宗教には病気が治った信仰体験が見られる。「信じる力」は侮れない。体内で何らかのスイッチが入るのだろう。

 私としてはむしろ、情報処理の機能として捉えるべきだと考えている。そこに世界-自分の関係が凝縮されているためだ。

 プラシーボ効果の最たるものはシャーマンのヒーリングである。特にインディアンの場合は魔術的な様相を呈する。

 病気は人生の転機となることが多い。苦痛という症状を通して生き方が改まるのだ。四苦八苦の四苦とは生老病死に伴う苦を指す。つまり、人間が避けることのできない苦悩といえる。個人的には治る治らないよりも、生きる姿勢や生に対する意識が変わるかどうかを重視する。

 事故や災害、あるいは殺される場合もある。それでも尚、「気づく」ことは可能だと思う。

 カバーデザインが悪い(原書のママ)。この色合いで売れることはないだろう。