古本屋の殴り書き

書評と雑文

沈黙に気づく/『癒しと目覚め Q&A』中野真作

『無(最高の状態)』鈴木祐
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『「私」という夢から覚めて、わたしを生きる 非二元・悟りと癒やしをめぐるストーリー』中野真作

 ・沈黙に気づく

『これのこと』ジョーイ・ロット
・『つかめないもの』ジョーン・トリフソン
・『オープン・シークレット』トニー・パーソンズ
『すでに目覚めている』ネイサン・ギル
『今、永遠であること』フランシス・ルシール
『プレゼンス 第1巻 安らぎと幸福の技術』ルパート・スパイラ

悟りとは

 いつも頭の中のうるさい人にとっては、思考が静まるのはほんの一瞬で、何かちょっと変な感じがしたなと思うだけか、そもそも気づくことすらないかもしれません。
 できれば、思考が止まったその瞬間に気づいて、意識的にその静かな感覚、何もない感覚を味わって下さい。沈黙に気づいたまま、沈黙の状態いいて下さい。
 その状態にいる、と言われてもよくわからないときは、短い思考の隙間、思考のない瞬間に気づくだけでもいいです。一回はほんの短い時間でもいいので、1日のうちに何度も何度も何も考えていない瞬間に気づくようにして下さい。

【『癒しと目覚め Q&A』中野真作〈なかの・しんさく〉(青山ライフ出版、2019年)】

 中野は20代で一瞥体験をし、その後ブレスワークで感情を解放した。50歳直前で二度目の悟り体験をする。「内側への爆発」は心身を焼き尽くし、社会からリタイアせざるを得ないほどの衝撃を及ぼした。現在は「スペースまほろば」を主宰している。

 先ほど少し外を歩いてきた。風に吹かれれば何か気づくものがあるかもしれないと思ったのだ。玄関を出ると、若い男がクラウンでアイドリングしていた。クルマの傍にはゴミが落ちていた。彼が捨てたものかどうかはわからない。ゴミを見た瞬間に、男を引きずり出して肉体的な苦痛と精神的な訓戒を与えてやろうかと考えた。

 私のまずいところは、こうしたことを本気で考えてしまう点である。既に還暦を迎えたため失うものは特にない。刑務所にも適応する自信はある(笑)。常々、社会の崩壊は気安く捨てたゴミから始まると思っている。その辺にゴミを捨てた者は腕を切り落とすくらいの罪に問うべきだ。否、死刑にしても構わない。それほどまでに私はゴミを憎んでいる。

 結局、煙草を一本吸って帰ってきた。気づきはなく怒りだけが残った。それでも帰りしなに落ちていたゴミを三つ拾った。クラウンは既に消え去っていた。

 我々はともすると思考を理性と考えているが、実は思考も感情と同じく脳の反応に過ぎない。反射といった方が正確か。感動した時、そこに思考は存在しない。思考は計算の延長線上にある。

 そして思考は妄想である。「判断も妄想」(くさなぎ龍瞬)なのだから当然だ。

 空疎なおしゃべりよりも、沈黙の中で信頼し合える関係性を求めるべきだろう。

 このテキストを敷衍(ふえん)すれば、寝ている時に夢を見るのも好ましくない。

 曲がり角にあった「止まれ」の標識が夕焼けに染まっていた。思考よ、止まれ。

癒しと目覚め Q&A (SIBAA BOOKS)

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