古本屋の殴り書き

書評と雑文

反社会的な人間は心拍数が低い/『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』橘玲

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ』橘玲
『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』橘玲、海外投資を楽しむ会

 ・スピリチュアル=呪術的=無意識
 ・反社会的な人間は心拍数が低い
 ・「予言が自己成就しない」実例

 犯罪心理学者のあいだでは以前から、「反社会的な人間は心拍数(1分間の鼓動の回数)が低い」ことが知られていた。これは動物も同じで、攻撃的で支配的なウサギは、おとなしく従属的なウサギに比べて安静時心拍数が低い。さらに、ウサギの支配関係を実験的に操作すると、支配力(群れのなかでの地位)が上がるにつれて心拍数が下がる。これが同じ相関関係は、サルからマウスまで動物界で広く見られる。
 人間でも、反社会的な学生は安静時心拍数やストレス時心拍数が低いとか、幼少時に測定した心拍数が、成人後の反社会的行動に結びつくなどの研究がある。

【『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』橘玲〈たちばな・あきら〉(幻冬舎、2021年幻冬舎文庫、2023年)】

 反社会的な人間は元々サイコパスと称したのだが、人権に配慮するという体裁で「ソシオパス」と呼ぶようになった経緯がある。現在は「反社会性パーソナリティ障害」との用語が一般的だ。

 簡単に言えば「善悪の概念が極めて弱く、他人に共感することができない」障害である。他人を傷つけても悪びれることがない、周囲が驚くような発言を平然とする、といった行動が顕著だ。

『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』M・スコット・ペック
『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント

「反社会的な人間は心拍数が低い」との指摘は腑に落ちる。他者への共感を欠いているがゆえに、緊張や焦りといったストレスが少ないのだろう。昨今は、アスペルガー症候群のように、知能は平均よりも高い発達障害が見受けられるようになってきた。時として高い知能が邪悪な方向に発揮される可能性がある。

 芸能・スポーツの世界にはソシオパスが多い。っていうか、著名人の大半はソシオパスだと思われる。特に政治家や学者はライバルを蹴落とすのが仕事となっており、まともな常識人ではやっていけないだろう。

 人気者ほど反社会性が高まる。そして人気者に額(ぬか)づく取り巻き連中が増えていくと、彼らの集団は「反社会性を帯びた社会」となる。日大アメフト部の薬物事件もこの文脈で考えると理解しやすいだろう。

 昔から映画のギャングものや、やくざものの人気が高いのは、わかりやすい社会性と反社会性を描いているためだ。