古本屋の殴り書き

書評と雑文

斎藤幸平著『人新世の「資本論」』を一刀両断/『自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠』柿埜真吾

『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫

 ・目次
 ・斎藤幸平著『人新世の「資本論」』を一刀両断

『アイデア資本主義 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア』大川内直子

必読書リスト その二

 2019年12月、中国から始まった新型コロナウイルス感染症が世界を襲うと、グローバリゼーションと自由市場経済の終焉を謳う論調が論壇に蔓延するおゆになった。(中略)新しい経済、コロナ後を語る知識人たちは、資本主義をもう埋葬し終えたような調子で話している。(中略)
 知識人たちが次々と社会主義に賛辞を贈る中、社会主義国社会主義の有効性を自賛し、「重大な戦略的成果が得られたことは、中国共産党の指導と我が国の社会主義制度の顕著な優位性を示した」と述べ、社会主義体制の勝利を誇示して見せた。

【『自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠』柿埜真吾〈かきの・しんご〉(PHP新書、2021年)以下同】

 ここで挙げているのは池上彰的場昭弘、中野剛志、斎藤幸平の4人である。本書は斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)を一刀両断にする内容で、社会主義者の狡猾(こうかつ)な論調を見事に粉砕している。

 私は、『資本主義の終焉と歴史の危機』を読んだ時にその風潮を感じた。水野和夫は説明能力が高いだけに手の内の隠し方が巧妙で、老獪(ろうかい)とすら思えた。

 だが、やはり事実を見てほしいというしかない。気象関連災害による死者は経済成長とともに大幅に減少してきた。人類はかつて自然と調和した素晴らしい生活を送っていたのに資本主義と経済成長のせいで、自然に復讐されているといった物語は事実に反する。母なる自然は有史以前から人類に全く親切ではなかったのである。

「これほどまでにテクノロジーが発達したのだから、そろそろ少々の不便は甘受しようではないか」というのが左翼による資本主義否定の口癖である。「だから社会主義」という本音を隠すところが厄介なのだ。ソ連やチャイナの現実を見ても考えが改まらない思考回路は手の施しようがない。

 パニックになる必要はない。冷静に事実を検討すれば、人類のこれまでの歩みは間違っていなかったし、未来は希望に満ちていることがわかるはずである。私たちが唯一恐れるべきことは、根拠のない恐怖に惑わされて、これまで人類の成功の鍵だった資本主義と経済成長を捨ててしまうことである。
 コロナ禍や気候変動といった人類の直面している課題を乗り越えるために、今ほど資本主義が必要とされているときはない。早まって資本主義を捨てることは、先人たちの築き上げてきた文明の遺産を捨て去ることである。人類のかけがえのない自由、民主主義、人権は、資本主義文明の産物である。
 これまで歴史上に現れた社会主義経済体制は、例外なく個人の自由を認めない最悪の独裁体制を生み出してきたが、これは決して偶然ではない。私的所有権がなく、政府が資産配分を決める社会主義経済では、ロシアの革命家レオン・トロツキーが述べたように、「働かざるもの食うべからずという古い掟は、従わざるもの食うべからずという新しい掟にとってかわられる」ことになる。(中略)
 社会主義者は企業家のことをよく「独占資本」などと罵倒するが、社会主義計画経済は、政府という唯一の雇用主しか存在しない究極の独占である。資本主義社会では、ある会社が読者を雇わないと決めても、読者は別の会社を探せばよいが、社会主義社会では政府が読者を決して雇わないことに決めたら、読者は生活手段を完全に失ってしまう。不当さを訴えようにも、話を聞いてくれる新聞社も弁護士もいないだろう。仮に読者に同情する心ある人がいたとしても、その人もやはり政府に解雇されてしまうだろう。全てのメディアが国営メディアである国に言論の自由などあるはずがない。気取った知識人はしばしば物質的問題を軽蔑して見せるが、物資的問題を精神的な問題と切り離すことは不可能である。精神の自由は、個人が自分自身の私的領域を持つことを許されない社会ではありえないのである。

 経済成長は結果である。最も大事なことは今の社会をどの方向に進めるかである。その意味から言えば、コロナ以降の政治はグローバルスタンダードに依存し、国家固有の目標を見失っている。ヴィジョンを持たない政治家は目の前しか見えなくなる。課題解決型の政治では早晩行き詰まることだろう。

 アメリカは内戦状態に陥り、薬物や盗難が堂々とまかり通っている。警察は有色人種を逮捕することに躊躇し、治安が乱れ切っている。それは反乱ではなく単なる犯罪だ。民主党政権は国家の治安を乱すことで、次のステージへと進みやすくするための地ならしをしているのだろう。

 結局のところ、第二次世界大戦の渦中で世界各国に深く浸透した左翼分子が資本主義国家を揺さぶっているのだ。

 新型コロナの国際的な動向を鑑みると、ユダヤ資本は中国共産党と手を組みつつあるように思われる。アメリカは既に「世界の警察ではない」と明言しているため、数年以内には沖縄から米軍が撤退することだろう。

 台湾有事のタイミングに合わせて、日本が核保有できるかどうかが運命の分かれ道となる。