古本屋の殴り書き

書評と雑文

レトリックとは/『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル

物語の本質~青木勇気『「物語」とは何であるか』への応答
『物語の哲学』野家啓一
『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫
『アラブ、祈りとしての文学』岡真理

 ・コミュニケーションの主目的は「なびかせる」こと
 ・デジタル版「新パノプティコン」
 ・レトリックとは
 ・九仞の功を一簣に虧くトランプ大統領批判

『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール

 レトリックとは、真実だけでなく人をなびかせる力を獲得するために発達した言語と論理による柔術の体系に、私たちが与えた総称である。

【『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル:月谷真紀〈つきたに・まき〉訳(東洋経済新報社、2022年)】

 レトリックは修辞学と訳されるが弁論術の方が実態に沿う。中世ヨーロッパの大学ではリベラル・アーツ(自由七科)の一つ。

「現代でいうレトリック(修辞技法・文彩)とはやや意味が異なり、基本的には弁論・演説の技術で、聴衆の説得・扇動・魅了を目的とするかなり政治的なもの。そのため修辞学では、聴衆を丸め込む心理操作の技術が大きな位置を占め、さらに演説者の身ぶりや発声法なども重要視された。つまり、修辞学は文彩だけでなく、言語学・政治術・話術・演技論・感情分析・思考法などの総体だった」(Wikipedia)。

 ジョナサン・ゴットシャルの「なびかせる」とは「自分の周囲に群れさせる」ことだ。動物の社会性とは所詮、「言うことを聞かせる」力と技が織り成す競争から生まれた果実なのだろう。

安田●やはり家畜の民がつくった文明が、現在の世界を支配しているということです。この点が21世紀には大変大きな意味をもつと思います。人間を家畜と同じようにコントロールして奴隷をつくる。(中略)
 もともと家畜の民だった人がつくった地中海文明のうえに、キリスト教という家畜の民の巨大宗教がやってきて、自然支配の文明をつくりだした。これが人類の歴史における大きな悲劇だったと思う。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男】

 ヨーロッパでは食事を共にすることが重視されるが、これは相手を奴隷扱いしてない意味が込められている。主人と奴隷が同じテーブルで食事をすることはないのだ。

 数百年も続いた白人の人種差別感情を変えることはそう簡単なことではない。もともとアブラハムの宗教には選民思想がある。一度彼らを奴隷にするくらいのショック療法が必要だ。

 昨今のイスラエルの思い上がりを知れば、少しは差別感情が理解できよう。イスラエルのエリートはパレスチナ人を殺すことを何とも思っていない。良心の呵責とは無縁だ。

 そうした劣悪極まりない彼らの手口を正当化するのがレトリックである。我々日本人は俳句や和歌で行こう。レトリックやロジックは国際社会における議論のために取っておけばよい。