・クリシュナムルティ「道標は重要ではない」
・『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス
道標のように、私は単に方向を指し示しているだけです。道標は、まったく重要ではありません。重要なのは、旅をしている人です。語り手は導師ではない。彼は権威ではない。彼は案内人ではない。自らは一人で、内的な旅を行わなくてはいけません――外的な物事を離れた反動としてではなく、理解しようとする必然的な過程として、です。
「教え」は絶対視するものではなく、悟りへの手段に過ぎないということなのだろう。「教え」に執着することは自我への執着を表わす。「絶対」という観念が存在意識を強化し、自我を際立たせる。
「道標(みちしるべ)は重要ではない」――鮮烈な宣言が雷の如く突き刺さる。それでも諸行無常の川を渡る私にとってクリシュナムルティの教えは「筏」(いかだ)なのだ。
自我なき人の広大な精神をただ仰ぐ。それは大空のように果てしない空間だ。
