古本屋の殴り書き

書評と雑文

栄養と犯罪は大きく深く関わっている/『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博

『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
・『粗食のすすめ幕内秀夫
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
・『医師や薬に頼らない! すべての不調は自分で治せる』藤川徳
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」』三石巌
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹

 ・栄養と犯罪は大きく深く関わっている
 ・統合失調症にはビタミンB3(ナイアシン)が効く
 ・砂糖の大量摂取が低血糖症につながる
 ・統合失調症を治療するための主要な三つのビタミン

・『食事で治す心の病 PartII 統合失調症にビタミンB3の効果!』大沢博
・『新・栄養医学ガイドブック サプリがもたらす健康の回復』柏崎良子
・『ビタミンB‐3の効果 精神分裂病と栄養療法』エイブラム・ホッファー
・『栄養・ビタミン療法 栄養による精神的健康の改善』マイケル・レッサー
・『精神疾患と栄養 うつ、不安、分裂病にうちかつ』カール・ファイファー、パトリック・ホルフォード
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
・『奇跡の結果 極度の用量ビタミンD3 製薬業界が皆さんに知って欲しくない大秘密 ビタミンD3(陽光ホルモン)1日2万5〜10万IU 一年の超多量摂取実験の 奇跡的な結果!』Jeff・T・Bowles
・『ナイアシン(ビタミンB3、ニコチン酸) ナイアシンによる改善例、注意点と考察』藤井努

身体革命
必読書リスト その二

 わかっているようでわからない、人間の体内の生命課程。わかっていることは、食べなければ体が衰弱し、やがて飢えによって死に直面するようになる、ということぐらいだろうか。なんとなくおなかを満腹にしてさえいれば、生きるのに支障がない。食べてさえいれば栄養は十分と信じている人が、意外と多い。
 じつはそうではない。毎日の食事こそが、生きていくうえでの原点である。母乳を飲んで育った赤ちゃんは、やがて成長とともに離乳食、ふつうの食事へと移行していく。食べものから糖質やタンパク質、脂質、ビタミンやミネラルをとるのである。体の各組織、心身のはたらきは、これらの栄養素によって大きく左右されることを知っているだろうか。歩いたり走ったりする運動機能、血液や骨をつくるほか、人間の思考や行動をつかさどる脳も、必要な栄養素が満たされるかどうかで、はたらきが大きくちがってくる。脳と栄養には、じつに重大な関係があるのである。

【『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博〈おおさわ・ひろし〉(第三文明社、2003年)以下同】

 栄養学にも造詣の深い武田邦彦は端的に「日本人が伝統的に食べてきたものを食べるのが正しい」と述べている。戦後になって大きく変わった食事情は肉・卵・牛乳・油の摂取であり、更にインスタント食品・加工食品・食品添加物まみれのスナック菓子・果糖ブドウ糖液糖(原料は遺伝子組換えトウモロコシ)で甘くした清涼飲料水が加わる。生活習慣病の原因はショ糖の摂り過ぎと考えてよい。その他にも輸入食料の増加が暗い影響を及ぼしている。腐敗防止の何らかの処理が施されているためだ。

 日本の伝統的な食料といえば、米・味噌汁・漬け物・魚・根菜・海藻であろう。ワカメや生海苔は日本人と韓国人しか消化できないという説もある。また温暖湿潤な気候のため、世界一豊富な発酵食品が存在する。

 まさかと思うかもしれないが、栄養と犯罪は大きく深くかかわっているのである。ひとくちに犯罪といっても、詐欺(さぎ)や経済犯などの知能的な犯罪ではなく、ふつうとみられている人が、いきなり凶暴な振る舞いをする、いわゆる“キレる”という行動が、とくに関係が深い。(『子どもの脳が危ない福島章、『栄養と犯罪行動アレキサンダー・シャウス)

 脳内でノルアドレナリンが過剰となり、オキシトシンが不足していることは容易に想像がつく。人体は電気信号と化学変化で動いているのだから食べ物の影響は侮れない。

 リード(オハイオ州キュヤホガ裁判所の保護観察官)は、106人の犯罪者のチェックリストを研究としてまとめているが、その前書きには、次のように書かれている。
「アルコールや薬物の問題のある人たちが、一貫して私に話したことは、10、11、12歳という少年少女期の食事に、砂糖、清涼飲料などの摂取が多かったことです。彼らに守るよう励ましたのは、砂糖なし、低でんぷん、すべてのジャンクフードをやめることでした。そしてその後、人格の変化が早く、劇的であることがしばしばでした。栄養のよい食事をつづけた人で、裁判所にもどってきた人はいませんでした」

 手軽な食べ物が脳にダメージを与える。一つの見分け方として「腐敗しない食べ物は毒だ」と考えてよかろう。微生物やカビですら忌避しているわけだから。マクドナルドのハンバーガーやマーガリンは腐ることがない(GIGAZINE)。数年経てもプラスチックのように変わらぬ姿を保つ。

「マクドナルドは絶対腐らない」、10年前購入のハンバーガーをライブ配信 アイスランド:AFPBB News

 人類史を振り返ると最大のエポックメイキングとなったのは新石器革命による定住である(『人類史のなかの定住革命』西田正規)。一方、定住のトレードオフとして感染症が登場する(『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット)。新石器時代は約1万年前である。たかだか人類史の200分の1の期間である。それまで我々の先祖は地球上を移動しながら生活していたのだ。果たして1万年で定住に適応できたのかどうかは不明だ。

 尚、カテゴリーの「オーソモレキュラー」(分子栄養学)とはビタミンやミネラルをサプリメントで補う療法で、メガビタミン療法とも言われる。名づけの親は二度ノーベル賞を受賞しているライナス・ポーリングである。