古本屋の殴り書き

書評と雑文

感情には構造がある~ABC理論/『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画

『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには 論理療法のすすめ』アルバート・エリス
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり

 ・感情には構造がある~ABC理論

・『新版 人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗
『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司、由佐美加子
『ザ・メンタルモデルワークブック 自分を「観る」から始まる生きやすさへのパラダイムシフト』由佐美加子、中村伸也
『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『ブッダの教え一日一話 今を生きる366の智慧』アルボムッレ・スマナサーラ
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ

悟りとは
必読書リスト その五

 例えば、「感情に振り回される」という表現は、怒りや嫉妬(しっと)といった負の感情に心がとらわれてしまい、自分ではコントロール不能と感じる時に使います。この表現では、「感情は自然に湧くもので、私たちにはどうにも手がつけられないこと」のように感じますが、本当でしょうか。
 1955年ごろ【認知行動療法】のベースとして【アルバート・エリス博士】は感情の構造(ABC理論)を提唱します。「【ABC理論】」によると「感情(Consequence)」は「出来事(Activating event)」に反応して起こるのではなく、出来事に対する「認知・捉え方(Belief)」によって引き起(ママ)されます。すなわちA→B→Cの順で起こっているのです。感情は出来事に反応して自然に湧くものだ(A→C)と感じていたが、実は出来事(A)を自分にどう説明したか(B)によって感情(C)は変わるのです。つまり、感情はその出来事を、あなたがどう解釈したの結果なのです。

【『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石〈じょうのせき〉ゆかり監修、今谷鉄柱〈いまたに・てっちゅう〉作画(実業之日本社、2017年)】

「ビリーフ」はバイロン・ケイティが多用する言葉である。通常は信念・信条・確信・信仰と訳される。そして実は信念が世界を歪めるバイアス装置として働くのだ。その意味で脳は妄想システムである。事実から懸け離れた因果関係を勝手にでっち上げる。

 私には予(かね)てから「思想とは物語である」との持論があるのだが、人の行動を情報の入出力という面から考えると、心がブラックボックスとして機能することに異論はないだろう。

 書籍や映画ですら全く同じ感想を抱くことはあり得ない。音楽にしても同様である。好き嫌いや損得、はたまた善悪といった価値観が複雑に絡み合うためだ。優れたドラマは人々の共感を喚起させることが巧みで、神話や昔話をモチーフにしていることも少なくない。就中(なかんづく)、宗教的ベースが大きい。日本の場合はアニミズムだ。

 感情が「認知・捉え方(Belief)」によって導かれるとすれば、物語は解釈によって生まれるのだ。性格とは解釈の傾向性を示したもので、バイアスの方向性を表している。

 感情は思考よりも脳の一段深いところで処理されている。そのためコントロールが難しい。だが、自分の感情を疑うことはできる。そこで重要なのは「別の解釈」を想像できるかどうかである。