古本屋の殴り書き

書評と雑文

戦後三高生の見識/『村田良平回想録』村田良平

『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『陸奥宗光』岡崎久彦
『小村寿太郎とその時代』岡崎久彦
『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦
『重光・東郷とその時代』岡崎久彦
『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦
伊藤貫「日本人が知らない三つの嘘! 憲法・核の傘・日米同盟」

 ・戦後三高生の見識
 ・戦前の「革新」とは天皇制共産主義

『米国の日本占領政策 戦後日本の設計図』五百旗頭真
『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克
竹山道雄

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 しかし三高時代を振り返って、私が米国の政策及び米国人の知的水準に強い疑問を感じたことが三点ある。第一はポツダム宣言を改めて読んだ時で、その第10項は「吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ、又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非ザルモ云々」とあった。私は連合軍は、もしドイツに対して降伏を勧告するなら、かかる表現は絶対に入れなかった筈であり、これ則ち「日本人の実質的奴隷化」を一度は考えたことがあった証拠だと考えた。かかる前置きなく単に「一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルベシ」とする文で充分だったはずだ。第二は、新憲法の前文である。前文は、それが英文の直訳であることが疑いを容れない悪文である上、全ての文章が内容的にも偽善以外の何者(ママ)でもなかった。特に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、勿論私個人はかかる決意は一切しておらず、いやしくも一応歴史を学んで国際政治の現実を知るに至った日本人は、何人もかかる決意をした筈はないと考え、この文章を書いたアメリカ人に強い個人的な憤りと軽蔑の念を抱いた。また前文3項の「いずれの国も自国のことのみに専心して他国を無視してはならないのであって云々」は余りに自明で、日本は明治以降米国よりはるかに他国の利益を尊重しており、かかる児戯にひとしい内容の文章を入れたこと自体日本文化への侮辱だと考えた。第三は、私自身は正確にはその範囲を知らなかったのだが、占領軍が約7000点の戦前・戦中に出版された書籍を没収し、あるいはそれらの販売を禁止したという話を耳にした時だ。いやしくも民主主義を説く以上、言論・出版の自由はその根幹であり、米軍の行わんとしていることは、秦の始皇帝焚書ナチスゲッベルス宣伝相による反ナチ思考書の集団焼却と同様の下劣な行為だというのが私の印象だった。

【『村田良平回想録(上巻) 戦いに敗れし国に仕えて』村田良平〈むらた・りょうへい〉(ミネルヴァ書房、2008年)】

 意気軒昂である。敗戦の暗い陰はない。村田は幼い頃から秀才で、この後京都大学に主席で入学している。かような高い見識を持つ高校生が存在した事実に驚かされる。

 GHQ焚書については西尾幹二が『GHQ焚書図書開封』を12冊刊行している。

 私は最近になるまで憲法に疑念を抱いたことはなかった。そもそもまともに憲法を読んだことがない。私の世代だと「平和憲法」は世界に誇るべき宝として義務教育で教わってきた。何も考えることなく憲法9条は「守るべきもの」と長らく思い込んできた。

 戦後の日本国憲法は世界最大の詐欺である。GHQが数名でたった1週間で作成したものだ。ところが77年を経ても我々日本人はそれに優る憲法を作ることができないでいる。

 この国は本当に独立しているのだろうか? 普通の戦力すら保持できない国が果たして国家たり得るのだろうか? 漫然とアメリカの核の傘の下で平和を享受できたのが実に不思議である。

 中国が台湾を侵攻した時が千載一遇のチャンスであると私は考えている。それを梃子にして新憲法を作り、国軍を創設し、満州を取り返すべきだ。日本の独立と同時に東アジアの地図をも変えるのだ。もちろん、チベットウイグル南モンゴルも独立させる。中国は共産党を取り潰し、直ちに民主化させる。旧権力者が一定の犠牲となることはやむを得ない。どうせなら漢人が住む地域は自治区にしてもいいだろう。

 それからインド・ASEAN諸国と安保条約を結んでアメリカと対峙する。そのためにはロシアとも手を組む。ただしEUは信じない。国連に代わる枠組みをアジアで創るのもいいだろう。