・『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ
・『消されかけた男』ブライアン・フリーマントル
・『裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー
・『女性情報部員ダビナ』イーヴリン・アンソニー
・『ワシントン・スキャンダル』イーヴリン・アンソニー
・『裏切りのコードネーム』イーヴリン・アンソニー
・『殺意のプログラム』イーヴリン・アンソニー
・女の嫉妬が燃え盛るマフィア小説
「誓うか?」と司祭が聞いた。
「一族の名誉にかけて」
このことばで誓われた約束は必ず守られる。
マリオ・プーヅォ著『ゴッドファーザー』を先に読んだ方がいいだろう。シチリアンマフィアの文化がよくわかる一冊で、ミステリとしての完成度も高い。
イタリアは左向きのブーツみたいな形をしているが、その爪先の前にあるのがシチリア島である。面積は四国の1.4倍ほど。
「シチリア人とイタリア人は違う。シチリアにはいろんな人種がいる。アラブ人、ムーア人、ギリシャ人。シチリアは侵略され続けたからね。もちろんイタリア人もいるが、イタリア人はイタリア人、シチリア人とは別の人種だ」
ヨーロッパの人種的複雑さが窺える。
「そうですか。それが疑問でした。殺人は許すが、私生児は許さない連中だから。きわどいところでしたよ。本当に」
「私生児は許さない」というのを初めて知った。いずれにしても閉鎖的かつ因習の深さは島という地理的要因によるものだろう。
「これは名誉の問題なんだ、クララ」
それを言われてはどうしようもない。クララも諦(あきら)めざるを得なかった。いくら新しい教育を受け、気ままにやってきたとはいえ、シチリア人である以上、しきたりを破れないということは分かっている。たとえクララでも、父の気持ちを変えることはできなかった。
ダビナシリーズ四部作の後で、「ひょっとして駄目かも」と思いながら、恐る恐るページをめくったが杞憂に過ぎなかった。新刊になる度に脂が乗ってきている。
戦地で出会った二人が形ばかりの結婚をする。その後二人は離れ離れになる。男は妻が死んだものと思い込んでいた。終戦後、男はアメリカへ帰り、別の女性と結婚する。二人ともマフィアの親分の子供であった。
イーヴリン・アンソニーの作品は登場人物の個性が際立っており、映画を見ているような気分が味わえる。一気読みする面白さではないのだが、物語に隙(すき)がない。