・『知的生活の方法』渡部昇一
・『続 知的生活の方法』渡部昇一
・大村大次郎
・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
・taxと税の語源
・税を下げて衰亡した国はない
・現行の税金システムが抱える致命的な問題
・社会主義的エリートを政府へ送り込んだフェビアン派
・一律一割の税金で財政は回せる
・目次
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
・『封印の昭和史 [戦後五〇年]自虐の終焉』小室直樹、渡部昇一
・『新世紀への英知 われわれは、何を考え何をなすべきか』渡部昇一、谷沢永一、小室直樹
・『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん
古来、税が高くて乱が起こったり、国が衰亡した例は無数にあるが、税が安くなったので乱が起こったり、国が衰亡した例などは一つもないことを改めて、そして常に、考えるべきだと思う。
【『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉(ワック、2012年/PHP研究所、1993年『歴史の鉄則 税金が国家の盛衰を決める』/PHP文庫、1996年/ワック文庫、2005年、改題改訂新版『税高くして国亡ぶ』/更に改題改訂したものが本書)以下同】
渡部昇一は英文法学者で、1970年代から谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉や小室直樹〈こむろ・なおき〉らと保守論壇を牽引してきた人物だ。左翼全盛の時代にあって保守言論人は右翼と目された。月刊誌『潮』誌上で菊池寛賞を返上した本多勝一〈ほんだ・かついち〉が、私の眼には恰好よく映った(1983年/『潮』昭和58年/1983年11月号「菊池寛賞を改めて拒否しなおす」本多勝一: 直木賞のすべて 余聞と余分)。そして本多の愛読者であれば必然的に山本七平〈やまもと・しちへい〉を嫌悪する羽目に陥る。
少なからぬ日本人が自虐史観を自覚し始めたのは21世紀に入ってからのことだろう。それでも政治家が「国益」なる言葉を使うことはできなかった。天皇陛下に対する尊崇の念を表明できるようになったのも東日本大震災以降と思われる。反権力の病はそれほど根の深いものだった。日本を貶(おとし)め、悪し様に罵ることが知性と勘違いされていた。
21世紀になってわかったのは、20世紀後半に活躍した知識人たちは一様に中国を礼賛し、北朝鮮を擁護してきた事実であった。
税金が高い国は、国民が不幸で政府の役人が幸福だと、昔からそう決まっている。
「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(小室直樹)である。税金は国防・治安・インフラ整備・社会保障の対価である。国民が搾取の対象となった時、誰が得をするのか? 経済的な視点に立てば誰かの損は必ず誰かの得となるのである。税率が下がっているのは高額所得者と法人税である。「トヨタは2009年から2013年までの5年間にわたって法人税を支払ってこなかった」(国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法)。
増税は、国民の富を涸渇(こかつ)させ自由を奪う。
令和4年度の国民負担率(見通し)は46.5%である(財務省)。「国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、56.9%となる見通しです」とも書かれている。本来であれば政府の赤字は国民の黒字になるわけだが、ま、今後の財務省の意気込みを述べたものと思ってよい。
収入の半分以上を税として支払う国家がまともだろうか? そんな国で若者は将来への夢を持てるだろうか? 岸田政権は当初から財務省支配といわれた。親族が財務官僚だらけなのだ。マスコミの政権批判が少ないところを見ると、財務省の言いなりになっていると考えてよかろう。
国民負担率については様々なデータがあるが、以下のページが最も参考になる。
“今の世の お上はきつい喘息で
昼も税々(ぜいぜい) 夜も税々”
江戸時代の狂歌は、こう皮肉っている。
国民の生活が苦しくなればなるほど資本主義経済への信頼は失われる。現行体制への不満は別の政治システムを希求する。ここに共産主義・社会主義を許す甘さがあるのだ。弱り目に祟り目の弱者が望むのは破壊と革命となってしまう。
税金と統制の度合いは正比例するのである。
現代の奴隷は「自らお金を支払う者」である(穀物が国家を作る)。低い税意識が統制を強化する。
税理士くらい後ろ向きの商売はない。税理士を雇う目的は、突き詰めれば、「いかに税金を逃れながら、税務署から文句を言われずにすませるか」ということだ。税金のシステムがもっと簡単なら、税理士のような、生産とは何の関係もない、負のエネルギーを使わなくてはならない商売はそんなにいらなくなる。有能な人材をいかに後ろ向きの仕事で浪費しているか、まったく国家の損失である。
さらに蛇足ながら付け加えると、こんなに大勢いる税理士でも、国税庁出身の税理士以外は、結局は役に立たないと、ある大手企業の社長さんから聞いたことがある。何か問題が起きた時、絶対に力を発揮するのは国税庁のOBだそうである。税務署のなかでいちばん恐ろしいのは国税庁に決まっているが、国税庁の役人に顔が利くのは、先輩、OBに限られる。彼らも定年後は、税理士として食べなければいけないから、国税庁出身の税理士には顔を売り、恩を売る必要があるからと言うのだ。
まったくの正論だ。この主張にイデオロギーの色彩は見られない。天下り官僚が国家を滅ぼすとすれば、こんな馬鹿げたことはあるまい。貧困は犯罪の温床である。政治家と官僚はそろそろ血祭りにされてもおかしくない。