古本屋の殴り書き

書評と雑文

静坐の功徳/『静坐のすすめ』佐保田鶴治、佐藤幸治編著

・『笑いと治癒力』ノーマン・カズンズ
『すらすら読める養生訓』立川昭二
『養生訓に学ぶ』立川昭二
『勝者の呼吸法 横隔膜の使い方をスーパー・アスリートと赤ちゃんに学ぼう!』森本貴義、大貫崇
『呼吸による癒し 実践ヴィパッサナー瞑想』ラリー・ローゼンバーグ
『古武術と身体 日本人の身体感覚を呼び起こす』大宮司朗
『白隠禅師 健康法と逸話』直木公彦

 ・目次
 ・静坐の功徳

『肚 人間の重心』 カールフリート・デュルクハイム
『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』ネドじゅん
お腹から悟る

身体革命
悟りとは
必読書 その五

静坐の功徳 釈宗演〈しゃく・そうえん〉

 静坐なるかな、静坐なるかな。静坐はよく五官をして静かに澄ましめ、知らず識(し)らず、その習慣を得るに至り、静坐はよく仁慈の心を生じて、邪悪の念起こらず、一切の人を見ることなほ自己の同胞の如し。静坐はもろもろの瞋恚(しんに)愚痴および愚かなる希望は、おのずから念頭より去る。静坐は常に五官を注視監督するをもって、罪魔もこれに近づくこと能(あた)はず。静坐は心汚れなく、思ひ清きをもって、静坐を為(な)すものは、下劣なる情慾の甚だしく起こり来るがごときことなし。静坐は心常に高尚なる思慮に集めらるるをもって、誘惑に陥らず、自我主義に傾くごときことなし。静坐はよく虚栄の空なることおを知るといへども、決して虚無主義に陥らず。静坐は生死の綱いかに細きも、よくこの生死の境涯おり脱するの道を知る。静坐は法身(ほっしん)の根本に徹底するをもって、仏の智慧の中に住す。静坐は何物にも誘惑せられることなきをもって、籠(かご)を出でたる鷲(わし)のごとく、自由にして、何等の妨げらるるところなし。これを静坐の功徳(くどく)となす。

【『静坐のすすめ』佐保田鶴治〈さほだ・つるじ〉、佐藤幸治〈さとう・こうじ〉編著(創元社、1967年/POD版、2006年)】

 本書で相馬黒光〈そうま・こっこう〉女史を知った。中村屋新宿中村屋)の創業者であり、クリームパンを創作した人物である。中村屋といえば日本で初めてインドカレーを広めたことで知られるが、それを伝えたのがラス・ビハリ・ボースであったのは有名なエピソードである。

 私は釈宗演〈しゃく・そうえん〉師も知らなかったのだが、なんと梅路見鸞〈うめじ・けんらん〉の師匠であった。驚くべきつながりである。

 本書の構成が素晴らしい。岡田式静坐法・藤田式息心調和法・二木式複式呼吸法の三本柱を中心に据えて、静坐のあり方を説いている。まだ読んでいる最中なのだが、岡田式と藤田式を試みたところ、老眼気味であった眼がぐっとよくなった。活字を追っていたところ霞(かす)みが消えたのだ。今先ほど数分前の話である。

 昨今は椅子での生活が増えてきているが、やはり床にしっかりと坐り、正しい坐法を身につけることが望ましい。これは決して精神論などではなく、日本人固有の身体的特徴に基づく考えだ。日本人が椅子に坐ると骨盤後傾が顕著になってしまう。

 尚、岡田式は正座、藤田式は坐法を問わず、二木式はまだ読んでいない。