古本屋の殴り書き

書評と雑文

白隠禅師、軟酥の法/『古武術と身体 日本人の身体感覚を呼び起こす』大宮司朗

『惣角流浪』今野敏
『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール

 ・白隠禅師、内観の秘法
 ・白隠禅師、軟酥の法
 ・平田篤穏の丹田法

『白隠禅師 健康法と逸話』直木公彦
『静坐のすすめ』佐保田鶴治、佐藤幸治編著
・『瞬間ヒーリングQEのすべて キンズロー・システム実践ガイドブック』フランク・キンズロー
『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・『クォンタム・リヴィングの秘密 純粋な気づきから生きる』フランク・キンズロー
・『ユーフィーリング! 内なるやすらぎと外なる豊かさを創造する技法』フランク・キンズロー

お腹から悟る
身体革命

 次に軟酥(なんそ)の法を紹介しよう。酥というのは、牛とか羊の乳を煮詰めて濃くした飲み物であるが、ここでは非常に貴重な仙人の薬とでも考えていただければよいだろう。軟酥の法というのは、軟(やわ)らかな酥を用いるという方法なのだ。
 もっともそんな仙薬を用意しなければならないというわけではない。すべてのものは、心の現れであるという仏教の大いなる原理、それは専門的には唯心(ゆいしん)の所現(しょげん)というが、その原理を用いるのだ。心のなかで想像するものが、唯心の所現という原理によって実際に存在するものと変わらなくなるのである。さて軟酥の法のやり方を分かりやすく説明しよう。

 1.まず、濃い色、清浄な香りのする鴨の卵くらいの大きさの丸い仙人の薬が頭の上にのっていると想像する。
 2.その神仙の絶妙な働きをもつ仙薬は、バターなどが熱で溶けて流れるように、しだいに体温でとけて軟らかくなり、頭上からゆっくりと下のほうにタラリタラリと流れ始めると瞑想、つまり心の目で見、深く思うのである。
 3.その仙薬は、頭の内外のすみずみまでうるおすことを観ずる。
 4.次に両肩、両肘、乳、胸をしずかにうるおして流れることを想像する。
 5.同時に、肺臓、肝臓、胃腸などの内蔵、また背骨、尾骨などもうるおして、しみわたるようにして下に下に流れることを想像する。この時心の一切の悩み、身体の一切の病もこの仙薬にとけて消え去るのである。
 6.この霊妙な神薬は身体の全てをうるおし、最後に足を温かく湿らし、足の裏まで流れ下ることを心の目で見るのである。
 7.以上のことを繰り返し繰り返し瞑想し、さらに、頭上から溶け落ち、全身にしみわたり、うるおして流れ下った神仙の薬は、次第に足元にたまり、下半身を温めることを心の目で見るのである。

 この軟酥の法を修してしばらくすると、不思議なことに誰にでも、鼻には類まれな妙香が感じられ、身体を気持ち良く流れる仙薬が感じられるようになる。

【『古武術と身体 日本人の身体感覚を呼び起こす』大宮司朗〈おおみや・しろう〉(原書房、2003年)】

「酥」(そ)の字は仏教の五味(生酥味、熟酥味)で知っていた。しかしながら、酥と蘇が違うことは知らなかった。

 蘇(そ)は、古代の日本(飛鳥時代平安時代)で作られていた乳製品の一種で、乳汁をかなり乾燥させ長期保管に耐える加熱濃縮系列の乳加工食品と考えられている。文献には見えるが製法が失われた「幻の食品」となっている。(中略)
 蘇が乳を煮詰めただけの物だと腐敗してしまうので、何らかの処理がなされたと考えるのが妥当である。ただし、中東からアジアにかけては近代まで酵素を使ったチーズが作られたという記録は確認されていないため、この製法は行っていないと考えられている。また上記のように製法が煮詰めただけならばクロテッドクリーム、更に発酵させるならカイマクやマライもしくはサワークリームのような乳製品が得られる。

蘇 - Wikipedia

「蘇」千年前の和製チーズ?【ホワイトデーにも】 レシピ・作り方 by YAMAT

 軟酥の法は実際にやってみると直ぐに気づくが、想像力を駆使することで皮膚感覚が研ぎ澄まされる。これまた絶妙なインナーボディのエクササイズとなっている。

 白隠は「42歳の時にコオロギの声を聴いて仏法の悟りを完成した」(Wikipedia)。

 内観の秘法と軟酥の法はもともと禅病対策として教えられた。

 禅病の症状には以下のようなものが挙げられます。

・被害妄想など、統合失調症のような症状
・冷えやのぼせ等、自律神経失調症のような症状
・ピリピリするような皮膚の痛み
・感情が抑えられなくなる

 またこのほかに幻覚や幻聴が聞こえることもあれば、下痢や便秘といった身体的な不調をきたすこともあります。

禅病とは?誤った瞑想・座禅により発症する病の意味・症状・原因・対策・予防法について紹介! - アマテラスチャンネル

 とすると、統合失調症自律神経失調症双極性障害ADHDも該当しそうだ。あるいは情報過多によるストレス障害にも当てはまるだろう。

 本来、ヒトの五感は自然の情報を読み解くために進化したと考えられる。それが様々なデバイス――紙(手紙や書籍、書類など)、電話、ラジオ、テレビ、パソコン、スマホ――によって過剰な情報処理を脳に強いるようになった。

 思考と感情は流れてくるタイムラインのようにとどまるところを知らない。これを妄想と受け止められるかどうかが悟りへの分かれ道となる。

白川竜次が西山創から站樁功(たんとうこう/立禅)を学ぶ