古本屋の殴り書き

書評と雑文

当初からデータを隠蔽し続けてきたワクチン医療/『ワクチン神話捏造の歴史 医療と政治の権威が創った幻想の崩壊』ロマン・ビストリアニク、スザンヌ・ハンフリーズ

『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之

 ・当初からデータを隠蔽し続けてきたワクチン医療
 ・平凡な医師たちはワクチン被害を知りながら沈黙し続けた
 ・19世紀の欧米は不潔極まりなかった
 ・ワクチン無効が明らかになると「一生続く免疫」から「重症化を防止」に変更
 ・1853年、イングランドでは天然痘ワクチン接種拒否が犯罪となった
 ・ワクチン未接種の不信心者に罰則
 ・ワクチン接種を強制するほど天然痘が流行
 ・感染症対策の基本は衛生、栄養、日光浴

ドキュメンタリー映画『突然死』(Died Suddenly)

必読書リスト その四

 そのグラフを見たことで、厄介だけれどシンプルな疑問が浮かびました。ワクチンによって感染症による死亡率が低下したのだろうか。いくつかの病気が撲滅されたのはワクチンのおかげなのだろうか。真実に到達するため、客観的な方法でこの問題に取り組もうと思いました。これらの疑問に対する答えは簡単に見つかりそうに思えました。結局のところ、ワクチンは100年以上も使用されているのです。CDC(米国疾病予防管理センター)や他の医療機関には死亡率と感染者率のデータベースがあるはず。しかし、驚いたことにそんなものは存在しなかったのです。私が探そうとしたデータは簡単に手に入りませんでした。しかし、本当にワクチンが死に至る感染症を駆逐したのであれば、これらのデータが一般の人の目に触れるようになっていないのは理屈に合いません。
 私はワクチン接種について調査を続け、イエール大学の医学部図書館や他の研究機関で数えきれないほどの時間を過ごしました。やっと死亡率のデータを探し出し、いくつかの異なるソースから得た統計をコンピュータの表計算プログラムに入力し始めました。死亡率の時系列の推移を示すデータを掲載する医学雑誌はほとんど存在せず、たまに掲載している場合は、私が当時すでに探し当てていた情報には触れていませんでした。米国における1900年からのデータからは、ワクチン導入以前にはしかの死亡率が98%減少していたということが見て取れます。もっと驚くべきことに同じデータを見ると百日咳の死亡率はDTPジフテリア破傷風、百日咳の混合ワクチン)の導入前に90%以上低下していました! 息子たちのかかりつけ医を含めて私の知る人が誰も、ワクチンのおかげではしかと百日咳の死者が減ったという言説の根本を注意深く調べていなかったことに驚愕しました。
 人々が「はしかと百日咳を撲滅するにはワクチンが不可欠であった」と信じているのはワクチン神話のせいであることを、現在の私は理解しています。ワクチン導入の前に死亡率が激減しているのですから、ワクチン以外の他の要因が関与しているはずです。(中略)
 私は何百もの医学雑誌と、これまで顧みられるの(ママ)ことのなかった1800年代から1900年代初めの本、雑誌、新聞を調査し続けました。すると新事実が浮かび上がってきました。これらの素晴らしい、興味深い歴史が図書館の地下室に埋まっていて、永遠に失われるところだったことに驚愕しました。新しく掘り起こした事実から、1800年代の生活状況に関してこれまでとは全くことなった見方をするようになりました。
 同時に、科学が大きな間違いを犯すことも発見しました。根拠の薄い間違った説の上に成り立った信仰体系に、私たちはいとも容易く絡めとられてしまっています。自分で掘り下げた調査をしたからではなく、権威ある存在が言うからというだけの理由で、何かを信じ込むということはどれほど頻繁に起こっているのでしょうか。皆さんは自分たちが信じている事柄が単なる幻想だったとしたらどうしますか?(「著者によるまえがき」ロマン・ビストリアニク)

【『ワクチン神話捏造の歴史 医療と政治の権威が創った幻想の崩壊』ロマン・ビストリアニク、スザンヌ・ハンフリーズ:神瞳〈じん・ひとみ〉訳、坪内俊憲〈つぼうち・としのり〉監修(ヒカルランド、2023年)】

 飛ばし読みするつもりだった。だって、出版社がヒカルランドだからね(笑)。底の浅い先入観が吹っ飛んだ。まともな学術書であった。通常サイズの四六判より一回り大きいA5判で上下二段422ページのソフトカバー。3960円が高いと思えば図書館から借りればよい。

 私淑(ししゅく)というほどでもないが私はかなり武田邦彦に傾倒している。特に福島原発事故新型コロナウイルス流行の際に情報を発信し続けた功績は見逃すことができない。武田はもともと材料工学における日本の第一人者であるが、原子力の専門家でもあり、他分野の学問についても造詣が深い。しかも常に独自の見解を示して、そのユニークさは凡庸な学者を睥睨(へいげい)している。

 新型コロナウイルス感染症は2019年に中国の武漢市から感染が始まり、翌2020年に入ると世界中に拡大した。武田が本格的に触れ始めたのは3月頃からのこと。その時点で東京都医師会のホームページの内容が書き換えられている事実を指摘した。当初、東京都医師会は「マスクには効果がない」と謳(うた)っていた。

 武田は継続的に疑問を提示し続けた。「厚生労働省が感染経路を発表していない」ことを何度も繰り返し指摘していた。急ピッチで認可されたワクチンに対しても疑義を挟(さしはさ)んだ。私にとっては武田の言説がワクチンとなった。

 医療に対して我々は「わからないから医師を信じる」というマインドセットになりがちだ。かつて天国と地獄を説いた宗教者は、現代の医師に姿を変えたのだろう。そして彼らの仕事は21世紀前後から「薬を処方すること」に成り下がった。医師は眼の前の病人を見てはいない。ただ症状を確認し、それに見合うと考えられた薬の処方箋を書くだけだ。

 製薬会社が完全に医療をコントロールしている。そのロビー活動たるや想像を絶するもので、許認可を取るためとあらば何でもやってのける。時には患者の家族のケアまで行い、「薬が効く」ことを証言させるのだ。

 金儲けのために人々の命を犠牲にしているわけだから、まさしく「死の商人」と呼ぶのが相応(ふさわ)しい。

「根拠の薄い間違った説の上に成り立った信仰体系」はワクチンに限った話ではない。我々の生活や人生のそこここで見つかることだろう。そんな眼を開かせてくれる一書である。