古本屋の殴り書き

書評と雑文

「肚」を説いた西洋人/『肚 老子と私』加島祥造

 ・「肚」を説いた西洋人

お腹から悟る

 私はこのように5人の西洋人の言説や観察から次第に肚の動きについて納得し始めたのですが、その先で道教の「心は流動体」という考えにゆきついたのでした。

【『肚 老子と私』加島祥造〈かじま・しょうぞう〉(日本教文社、2005年)】

 見返しにある著者近影が80歳を過ぎている(※「あとがき」では77歳になっている)にもかかわらずハンサムで、どこか五木寛之を想わせる風貌をしている。そして文体が薄気味悪い。松岡正剛〈まつおか・せいごう〉っぽいこねくり回し方が肌に合わない。それでも内容がいいので教科書本としておく。普段だったら絶対に読んでないが、私の知らない「肚」に関する情報が豊富だ。

 以下に5人の西洋人の名を挙げる。

カール・グスタフ・ユング
アラン・ワッツ
・アーサー・ウェーレー(アーサー・ウェイリー
カールフリート・デュルクハイム
D・H・ロレンス

「アラン・ワッツ」の名前が異彩を放っている(笑)。老子ニューエイジは親和性が高いのだろう。

 加島祥造は既に物故している(2015年)。ネドじゅんを読ませたかったとつくづく思う。あるいは、アラン・ワッツからクリシュナムルティに辿り着いただろうか?

 世代や時代というものは実に不思議で、奇蹟的な邂逅(かいこう)や微妙な擦れ違いで織り成されている。しみじみと我が身の幸運を感じる。