古本屋の殴り書き

書評と雑文

「鉛直」と「垂直」の違い/『身体感覚をひらく 野口体操に学ぶ』羽鳥操、松尾哲矢

『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』齋藤孝
『野口体操 感覚こそ力』羽鳥操
『野口体操・からだに貞(き)く』野口三千三
『野口体操・おもさに貞(き)く』野口三千三
『野口体操・ことばに貞(き)く 野口三千三語録』羽鳥操
『原初生命体としての人間 野口体操の理論』野口三千三

 ・「鉛直」と「垂直」の違い

『アーカイブス野口体操 野口三千三+養老孟司(DVDブック)』野口三千三、養老孟司、羽鳥操
『野口体操 マッサージから始める』羽鳥操
『「野口体操」ふたたび。』羽鳥操
『生体の歪みを正す 橋本敬三・論想集』橋本敬三

身体革命

 ここで「鉛直」と「垂直」の違いを押さえておきましょう。
「鉛直」とは、鉛直線の方向を言います。「鉛直線」とは、糸や紐(ひも)に鉛の玉をぶら下げたときに生まれるまっすぐな直線のことです。つまり、重力の方向。物体をつり下げた糸や紐の示す方向の直線のこと。水平面と垂直をなす線のことです。
「垂直」とは、重力の方向でもありますが、二つの直線が互いに90度で交わる(直交する)ことを言います。重力の方向だけではない場合であっても垂直ということができます。
 野口体操では、つり下げられた物が落ちていく方向、重力の方向を実感するためにも力を抜くことに焦点をあてて動きを探ります。

【『身体感覚をひらく 野口体操に学ぶ』羽鳥操〈はとり・みさお〉、松尾哲矢〈まつお・てつや〉(岩波ジュニア新書、2007年)】

 やっと腑に落ちた。つまりこうだ。寝た状態で脚を【垂直に上げる】という表現をすればわかるだろう。鉛直とは地面に対する垂直方向を意味するわけだ。

 野口体操では揺れ、振り、ぶら下げを重視する。これは筋肉ではなく体の重さを活かすためだ。野口三千三は重力を束縛とは捉えない。

 そして、重心が向かう「地球の中心」こそが人類共通の故郷(ふるさと)であると説くのだ。何という慧眼であろう。