・『脳から見たリハビリ治療 脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方』久保田競、宮井一郎編著
・『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』多田富雄
・『リハビリテーション 新しい生き方を創る医学』上田敏
・『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三
・『リハビリテーション・ルネサンス 心と脳と身体の回復 認知運動療法の挑戦』宮本省三
・屈筋と伸筋
・身体革命
腕には、屈筋(曲げる筋肉)と伸筋(伸ばす筋肉)という相拮抗する2種類の筋肉があります(もちろん、屈筋と伸筋は腕だけでなく、身体全体に分布しているわけですが)。この屈筋と伸筋はその使用感覚(腕を動かすときの感覚、力感覚)にきわめて大きな差があるのですが、このことに気づいている人はほとんどいません。この屈筋と伸筋の使用感覚の違いは、人間の進化の歴史と密接に関係しています。
四つ足動物の後ろ足の機能は、今の人間の足とそれほど大きな違いはありません。たとえば、後ろ足は地面を後ろに蹴る(伸ばす)ことが、その主な機能です。
では、前足はどうかというと四つ足動物の場合は、自分のほうに引き込む動作(曲げる)が主な機能です。つまり、かつて人間の腕が前足であったときは、地面と接しているために、その運動範囲は拘束を受け、屈筋がその運動の主体(屈筋主導)でした。つまり、引き付ける運動が前足の最も大切な機能だったのです。しかし、二本足で活動できるようになった人間の腕は、地面から離れ、その運動範囲はほかの生物と比べようもないほど自由になり、伸筋を主体にして動かすような運動が可能になっているのです。ところが、四足歩行(両生類・哺乳類)の歴史と、完全な直立二足歩行(現代人の体型の原型であるクロマニヨン人)の歴史を比べると7000:1(3億5000万年:5万年)という大きな差があるため、つまり、前足が腕になってからの歴史があまりにも短いために、私たちの腕は腕にもかかわらず、かつての前足としての機能が優先されています。
たとえば、猿は木の実を取ろうとするとき、地面をかくのと同じような動作をしますが、地面に対して二本足で直立しているにもかかわらず、私たち人間も猿と同じような動作をしたまま現在に至っているのです。要するに何かしようとしたときに、つい元前足である腕の部分で引っぱってしまう。引っぱるのは屈筋が主として働いているよい証拠です。
このように、かつての前足としての機能が優先されている人間の腕は、その使用感覚においても屈筋に偏っています。通常の人間が腕を使用すつときの感覚、腕を動かすときの感覚は前足の機能(運動)の主体である屈筋に偏っているのです。そのために、腕として働くために持ちえた機能であるはずの伸筋の運動は屈筋のような使用感覚がなく、あったとしてもきわめて微細な感覚しかありません。
このため、ほとんどの人は人間本来の腕の機能をうまく発揮できず、それが、本来人間の持つ創造的な機能を充分に発揮できなくさせている原因ともなっているのです。二本足で活動できる人間特有の身体動作である伸筋主導の動きを身につけることが、精神的にも肉体的にも人間の能力をアップするうえで、とても重要な鍵であることを知る必要があります。
武術、特に太極拳に代表される中国武術は、この伸筋主導の身体を養成するように組み立てられ、その特別な訓練方法を功夫(クンフー)と称しています。
(中略)
もっとも武術に限らず、能や狂言に見られる動作、茶道、華道などの礼法、また、近年少なくなった伝統工芸に見られる職人さんの手仕事なども、本人の自覚の有無にかかわらず伸筋主導の運動となっている場合が多々見受けられます。ひとたびこのような伸筋運動を身につけた人は、高齢になって日常の運動はできなくなっても、長年の努力によって身につけた芸の動作(伸筋運動)を行うときはシャンとなります。これは単に長年の経験でそうなっているわけではなく、身体が伸筋主導の運動を身につけているからです。ただ、残念なことにその運動が伸筋主導の運動であるとの認識がないために、他の動作に応用できないのが現実のようです。
さて、このように、腕の機能ひとつをとっても人間の心身の進化と深く関係しています。私たちは、自分の身体感覚についての正しい理解がないために、腕を動かすときすら不合理で効率の悪いことをしています。ましてや、人間の精神の機能となれば腕とは比べものになりません。それが、私たちの苦しみ、悩みの元であり、社会の混乱の原因なのです。
人間の心身の使い方について私たちは大きな誤り、錯覚をしているわけですが、その原因は私たちの現状に対する理解のなさ(無知)です。多くの人は自分の心と身体に使い方があることにすら気づいていません。私たちの現状を正しく認識し、私たちがいまだ進化の途上にあること、身体も心も、もっと潜在能力を引き出すための使い方があることを、すべての人間が知る必要があります。ましてや、今現実に障害などで苦しんでおられる方はなおさらのことではないでしょうか。【『リハビリ革命 動かないと宣告された腕が、足が動いた』茂呂隆〈もろ・たかし〉、茂呂恵子〈もろ・けいこ〉(洋泉社 (1995年)】
最初に誤読した。私はむしろ動物本来の動きである屈筋を鍛えるべきなのではないかと思った。何度か読み直してやっと理解できた。
練気柔真法(島田明徳〈しまだ・めいとく〉)という武術メソッドで、「絶対に治らない」と医師から告げられた身体障碍者を次々と恢復させたリハビリ法が紹介されている。
リハビリテーションについては予(かね)てより興味があり、私は筋トレとして捉えてきた。機能回復という点では、常人が筋肉隆々となることよりもリハビリの方が優れていると考えたのだ。
また、大東流合気柔術を知ってから合気(あいき)に対する関心は高まる一方だった。
私にとってはまさにドンピシャリのタイミングで読んだ一冊である。筋肉に屈筋と伸筋があるのは知っていたが、腕の伸筋についてこれほど深い洞察を示したのは茂呂隆が初めてではないか。
ChatGPTのやり取りを披露しておこう。
動物の前肢は屈筋が優位ですが、進化の方向性からいえばヒトの腕も屈筋が優位と考えられます。そこでヒトの次なる進化を考えた場合、屈筋を鍛えた方がよいのか、あるいは伸筋を鍛えた方がよいのかを教えて下さい。
ChatGPT:
非常に興味深い問いですね。「屈筋優位」という観点と、「ヒトの進化の方向性」、さらに「鍛えるべき筋肉」という実践的な問いを絡めて考えるには、生物学・進化学・解剖学・運動学を総合的に見る必要があります。
◆ まず「屈筋優位」とは何か?
多くの動物種では、前肢(上肢)において屈筋が伸筋よりも発達しています。これは、
・獲物を捕らえる
・自分の身体を引き寄せる
・木に登る
・地面を掴む
といった、**引きつける動作(pull)**が生存にとって重要だったからです。
ヒトの上肢(特に腕)も、解剖学的に見ると「屈筋が強い」構造になっています。例えば、
・上腕二頭筋(肘を曲げる)
・前腕屈筋群(手首や指を曲げる)
などは非常に発達しています。
◆ では、「ヒトの進化の方向性」はどこに向かっているのか?
これには諸説ありますが、大まかに次の2つの観点があります:
身体的進化(生物学的)
→ 現代では身体を酷使せずとも生きていけるため、「筋力の退化」が進むとも言われています。
社会的進化(環境との関係)
→ 繊細な指の操作、情報処理能力、長時間の座位作業など、「伸筋が求められる局面」が増えています。
◆ 結論:「どちらを鍛えるべきか?」
✅ 日常生活や老化防止の観点から:
伸筋を意識的に鍛えることが重要です。
・屈筋は普段の生活(物を掴む、持つ)で自然と使われるため、相対的に鍛えられやすい。
・一方、伸筋(特に背筋、腕の伸筋、下肢の伸筋など)は使われにくく衰えやすい。
特に高齢者や座位時間が長い人では、
・姿勢が悪くなる(猫背)
・転倒しやすくなる
・歩行が不安定になる
といった問題が「伸筋の衰え」と関係しています。
✅ 機能的な進化を促す視点から:
精密動作、身体バランス、姿勢制御、長時間の作業に必要な持久力など、文明社会におけるヒトの進化には、伸筋の機能向上が関与していると考えられます。
◆ おすすめのトレーニング部位(例)
| 伸筋グループ | 重要な筋肉 | 推奨エクササイズ |
|---|---|---|
| 上腕伸筋群 | 上腕三頭筋 | プッシュアップ、ディップス |
| 背部伸筋群 | 脊柱起立筋、多裂筋 | デッドリフト、バックエクステンション |
| 股関節伸筋群 | 大臀筋、ハムストリング | スクワット、ヒップスラスト |
| 下腿伸筋群 | 前脛骨筋 | トウレイズ(足の甲を上げる) |
◆ 最後に:未来のヒトにとって必要なのは?
屈筋は「生存本能的に強い」傾向がある一方で、伸筋は「文明的な機能進化」に欠かせない筋肉です。よって、
🔹 次なるヒトの進化を見越すなら、意識的に「伸筋」を鍛えるべきです。
特に、
・姿勢制御
・精神的集中
・長寿
・バランス
などを支える土台として、「伸筋の鍛錬」は、これからの人類にとって極めて重要です。
必要であれば、具体的な「伸筋強化メニュー」もお作りしますよ。ご希望あればお気軽にどうぞ。
ChatGPT:
素晴らしい視点です。
武術、特に合気道・合気柔術における「伸筋の使い方」は、単なる力の発揮ではなく、姿勢、重心、意識の方向、間合い操作などと密接に関係しており、非常に高度です。
以下、体系的に解説いたします。
◆ 1. 合気道・合気柔術における「伸筋の意味」
多くの武道が「力を抜け」と教えますが、それは脱力=弛緩ではありません。
むしろ、**伸筋群を中心に「張りを保った脱力」**を使うのが合気的な身体操作です。
◆ 2. なぜ「伸筋」が重要なのか?
✅ 解剖学的に:
屈筋は「引き寄せる筋肉」、つまり「内向き」。
伸筋は「押し出す」「支える」「開く」など「外向き」。
武術においては、相手との距離(間合い)を保ちつつ、中心を保つために、
▶ 伸筋を「使い続ける」ことが非常に重要になります。
◆ 3. 合気道・合気柔術における伸筋の使い方:具体例
【例1】上腕三頭筋(肘を伸ばす)
技:一教、四方投げなどで、相手を制しながら導くとき。
ポイント:肘を引かず、伸ばして押し出すことで、力を伝える。
ミスしやすい点:肘を曲げる(=屈筋優位)と、相手と「ぶつかる」か「引き込まれる」。
【例2】脊柱起立筋(背筋)+ 大臀筋(股関節伸筋)
技:入り身投げ、呼吸投げのような「体幹移動型」の技。
ポイント:身体の重心を沈めながら、背筋と臀筋を「張る」ことで重みと中心を伝える。
誤解されがちな点:「腰を落とす」と言って膝を曲げ屈筋に逃げてしまう。
【例3】前腕伸筋群(手首・指を伸ばす)
技:小手返し、入り身転換など「接触点の張り」を維持する技。
ポイント:握る(=屈筋)よりも「伸ばす張力」で相手に接し、導く。
上級者は、握る力ではなく、「指を開きつつ当てる」ことで合気をかける。
◆ 4. 身体操作としての「伸筋主導」
合気道における理想の身体状態は、よくこう言われます:
🔹「常に、伸ばしながら、縮める」
🔹「外に向かって張りながら、内に収める」
これは、
・表層筋(特に伸筋)で張力を保ち
・深層筋で重心を沈め、軸を整え
・動作の全体を「押す」ではなく「導く」ことで完結する
という 重力・遠心力・相手の力の「受け流し」に向いた身体の使い方です。
◆ 5. まとめ:合気的身体における伸筋の役割
| 項目 | 伸筋の役割 |
| 姿勢保持 | 軸を崩さず、常に中心を保つ(脊柱起立筋、大臀筋) |
| 接触と誘導 | 握らず張ることで「当て身」や「吸い付け」を作る(前腕伸筋) |
| 重力操作 | 上から下への流れを支える(大腿四頭筋、ハムストリング) |
| 技の発動 | 押す・導く・投げるなどに不可欠(上腕三頭筋、背筋) |
◆ 補足:伸筋を鍛えるための稽古法(合気道的アプローチ)
木剣・杖の素振り
→ 手首と肘を「伸ばしたまま切る」動作は、前腕・上腕の伸筋を強化します。
正座呼吸法
→ 背中〜臀部の伸筋を意識し、軸を保ったまま呼吸を通す稽古。
四股立ち・入り身歩法
→ 股関節・膝関節の伸筋を支点にして移動。重心を保った動きが身に付きます。
必要であれば、「伸筋優位の武術的稽古プラン」や、ストレッチとの組み合わせもご提案できます。お気軽にどうぞ。
伸筋を鍛えておくことで、高齢障がい者になった際の拘縮も防ぐことは可能でしょうか?
ChatGPT:
はい、伸筋を意識的に鍛えておくことは、高齢障がい者になった際の「拘縮(こうしゅく)」の予防に非常に効果的です。
むしろ、伸筋の萎縮・不使用が拘縮の原因の一つになっていることを理解することが重要です。
◆ 拘縮とは何か?簡潔に
関節や筋肉、腱が硬くなって動かなくなる状態。
長期臥床や活動量低下、片麻痺、神経障害、痛みなどにより、
・屈筋が過緊張
・伸筋が弛緩・萎縮
→ 結果として関節が曲がったまま固まる。
例:肘が曲がって戻らない、手が握られたまま開かない、股関節が屈曲して座位がとれない etc.
◆ なぜ伸筋を鍛えておくことが大切か?
✅ 1. 拘縮は「屈筋優位のまま放置」されることで起きる
多くの拘縮は、屈筋(曲げる筋肉)ばかりが働いて、伸筋が使われない状態で発生します。
高齢・神経障がいがある場合、脳の「抑制機能」が落ち、屈筋の過緊張が起こりやすい。
➡ 伸筋の予備力をつけておくことが、バランス保持と予防になる。
✅ 2. 伸筋は「姿勢保持・関節伸展・重力制御」に関与
高齢期には 背中が丸くなり、手足が曲がる方向に変形しやすい(=屈曲拘縮)
伸筋が使えていると、
・姿勢保持力がある
・可動域が保たれる
・転倒リスクが減る
➡ 高齢者施設や障がい者施設で「背筋を鍛える体操」が重視されているのもそのためです。
✅ 3. 神経系にも良い影響がある
伸筋を使う運動は、運動神経と姿勢制御の経路を刺激します。
これは脳卒中後のリハビリ(上肢・下肢)や、パーキンソン病、筋ジストロフィーの進行抑制にも応用されています。
◆ まとめ:伸筋を鍛えることで期待できる効果
| 目的 | 効果 |
| 姿勢の維持 | 拘縮による丸まり、寝たきりの悪化を防止 |
| 筋バランスの安定 | 屈筋の過緊張を抑え、動きやすさを保つ |
| 関節可動域の維持 | 肘・膝・股関節・手首などの拘縮予防 |
| 自立動作の保持 | 移乗、起立、歩行、食事動作の維持 |
| 神経系の活性化 | リハビリ時の回復促進、QOL向上 |
◆ 実践に役立つヒント
日常生活に「伸筋を使う習慣」を取り入れる
例)壁押し運動、肩甲骨寄せ体操、足の甲を上げる(トウレイズ)
座位や臥位でもできる伸展運動を取り入れる
例)背伸び運動、足首・膝伸ばし、手を広げて深呼吸
ストレッチだけでなく、筋力もつける
→ 筋肉がないと、ストレッチで伸ばしてもすぐ戻ってしまいます。
