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・『調子いい!がずっとつづく カラダの使い方』仲野孝明
・『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』齋藤孝
・『野口体操 感覚こそ力』羽鳥操
・『野口体操・からだに貞(き)く』野口三千三
・『野口体操・おもさに貞(き)く』野口三千三
・『野口体操・ことばに貞(き)く 野口三千三語録』羽鳥操
・『原初生命体としての人間 野口体操の理論』野口三千三
・『「野口体操」ふたたび。』羽鳥操
・『誰にでもわかる操体法』稲田稔、加藤平八郎、舘秀典、細川雅美、渡邉勝久
・健康とは
・人体構造と歪みの発生
・橋本敬三の基本的な呼吸法
・『沖ヨガ入門 精神が肉体を自由にできる』沖正弘
・『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・身体革命
III 身体運動と歪みの発生
この場(人体の基礎構造である運動器系の生理と病理)を現代医学は最も等閑視して来た。運動系の構造とその生理について概観する。
〔1〕人体の構造
単純な家屋構造にたとえよう。四つの土台の上に四本の柱を立て、屋根を合掌で組み合せ、中央を棟木でつなぎ、屋根を葺き、天井を張る。この棟木の前方に頭を付け、後方に尻尾を付ければ、四足の哺乳動物となる。前方合掌は肩甲、後方は骨盤に当たる。内蔵は屋根裏にセットされ、中枢神経の脊髄は棟木の管腔を貫くし、自律神経はこれに並行する。人間はこの動物が後肢で直立したもの(【別刷折込み図案「人間―この動き建物」参照】)である。家屋の外壁には、電線、ガス管、上下水道等が配線され、出入口あり、窓あり、感覚、情報受信器が至るところに設置されている。この建物が動くのである。しかも連動する。そして、少なくとも四つの営みが自然法則に反すれば、運動系は形態学的に、また運動力学的に、歪む。
〔2〕
人間―この動く建物―には構造運動力学が作用する。ストレッサーにより、骨格の組合せがズレると、これに連結する横紋筋に異常緊張が起きる。過剰運動で、筋が異常緊張に陥り、緩解しないときにも骨格の配列にズレが起こる。筋の異常緊張が持続すれば、これらを包接する軟部組織には内圧の変化が起こる。内圧の変化が起これば、系内配線の末梢循環系および神経系は一時的には力学的に、二次的には生化学的に、アンバランスを生ずる。血液循環障害は酸素欠乏をもたらすことにもなる。受信器はこれらを異常感覚として受け取る。かくして機能障害に進む。
このメカニズムは未だ科学化されてはいないが、フランスのレーリーの自律神経の過剰刺激の実験や、名大生理の高木健太郎教授の圧反射の実験、金沢の藤田六朗博士の経絡現象の研究などが、解明の鍵になるものと期待している。【『生体の歪みを正す 橋本敬三・論想集』橋本敬三〈はしもと・けいぞう〉(創元社、1987年/オンデマンド版、2010年)】
タイトルの中黒は奥付に倣った。この独創的な図は見ていて飽きない。現代人はともすると骨格よりも筋肉に意識が向きがちである。筋肉を鍛える人はいても、骨格をきちんと揃える人は少ない。その意味からもイス軸法や秀徹の登場が目を引く。期待も大きい。
橋本敬三は医師だが後に「操体法」を創始するに至った。刃牙(バキ)のモデルである平直行も実践していたことで知られる(動画)。民間療法にも造詣が深い橋本が真剣かつ真摯に人体を見つめてきた結晶といってよい。