古本屋の殴り書き

書評と雑文

体全体で傾聴する/『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール

『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『気づきの視点に立ってみたらどうなるんだろう? ダイレクトパスの基本と対話』グレッグ・グッド
『わたしは「いま、この瞬間」を大切に生きます』エックハルト・トール

 ・インナーボディとつながるエクササイズ
 ・インナーボディは「大いなる存在」への入口
 ・インナーボディとつながる
 ・インナーボディに根を下ろす
 ・体に住まうこと
 ・体全体で傾聴する

『古武術と身体 日本人の身体感覚を呼び起こす』大宮司朗
『白隠禅師 健康法と逸話』直木公彦
『弓と禅』中西政次
『釈尊の呼吸法 大安般守意経に学ぶ』村木弘昌
『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』ネドじゅん
『カシミールの非二元ヨーガ 聴くという技法』ビリー・ドイル
『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・『世界でいちばん古くて大切なスピリチュアルの教えエックハルト・トール
『ニュー・アース』エックハルト・トール
『覚醒の炎 プンジャジの教え』デーヴィッド・ゴッドマン
『誰がかまうもんか?! ラメッシ・バルセカールのユニークな教え』ブレイン・バルドー編

お腹から悟る
悟りとは
必読書リスト その五

 人の話を聞くときには、頭だけで聞かないで、「からだ全体で」聞くよう心がけましょう。話を聞くと同時に、インナーボディを感じるのです。こうすると、「無心状態」をつくることができ、思考に邪魔されずに、ほんとうに話を聞くことができます。相手に「いまに在る」ためのスペースを与えているのです。これは、話し相手に与えられる、一番貴重な贈り物です。

【『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール:飯田史彦〈いいだ・ふみひこ〉監修、あさりみちこ訳(徳間書店、2002年/原書、1999年)】

 順番が前後してしまうがご容赦を。

 先ほど80歳近いご老人と話をした。初めて会う方だ。息子が障碍者で、最近になって夫人を介護施設へ入れたということを私は聞いていた。「奥さんが老人ホームに入られたようですね。お加減はどうですか?」と訊(たず)ねた。

「本当は自分が面倒を見てやりたかったのです」と彼は言った。懇談しながら私は「介護施設の方が安全である」旨を説いた。

 はたと気づいて私はインナーボディへ意識を向けた。内臓感覚を研ぎ澄ました瞬間だった。「実は……」と言葉を詰まらせ、ご老人が泣き出したのだ。ほぼ同時であった。びっくりした。が、辛うじて内臓感覚は保った。

 私はご老人の肩に手を置き、黙っていた。しばらく涙をこぼしながら大きく息を吐くと、面(おもて)を上げた。「妻に嘘をついて老人ホームへ入れてしまったのです」と。言葉が溢れ出した。私は内蔵で受け止めた。

「でも、それは相手を傷つけないための知恵だったのではありませんか?」と私は言った。

 ほんの10分程度の立ち話であったが、ご老人は明るい表情で深く頭を下げて礼を言った。

 雨上がりで湿った空気が少しだけ揺れた。