古本屋の殴り書き

書評と雑文

味噌汁は放射能を防ぐ/『体質と食物 健康への道』 秋月辰一郎

『味噌をまいにち使って健康になる』渡邊敦光

 ・味噌汁は放射能を防ぐ

『誰でもできる手づくり味噌』永田十蔵

 体質を決定するものは、食物である

【『体質と食物 健康への道』 秋月辰一郎〈あきづき・たついちろう〉(クリエー出版、1980年)以下同】

 60ページの小品である。古書がべら棒な値段になっているので図書館から借りるのがよかろう。

 体質は生まれついてのものと考えがちだが、後天的な影響の方が強いとの指摘である。人体は「食べたもの」で作られているのだから当然といえよう。

 この風土が人間を作るということは、本当に大切なことである。風土が体質を作り出すのにもかかわらず、そのことが余りに明瞭であるために、むしろ等閑に付されている。日本精神・日本文化・日本人の性格は、日本の風土によって作られている。日本の特殊性がずいぶんと日本的な思想的展開をしている。私は体質も同じことだと考えている。食物についても同じことがいえると思う。

 日本人が長く食べてきたものを摂(と)ることが望ましい。生まれてきた赤ん坊は「両親が食べてきたもの」で出来ていると考えられる。とすると、無数の先祖の食料に思いを馳せるべきだ。ヒトは風土に適応して生き延びてきたわけだから、その土地で収穫したものを食べることが生存戦略としても適(かな)っている。

 日本人が長く食べてきたものは米・野菜・魚介類・海藻だ。特に生海苔やわかめは日本人だけが消化できるという説がある(朝鮮人も含む)。

 腸内細菌や酵素が風土に応じて進化する。日本人は、平均身長は欧米に比べると低いが腸の長さは1メートルも長い。更に貝類を食べてきたおかげで我々はヒ素にも強い。外国人が寿司の貝ネタを食べ続けるとヒ素中毒になる。

「悔い改めよ」でなく、「食い改めよ」である。

 上手い! さすがクリスチャンである。座蒲団3枚。

 ところが(両親の)半端な栄養学的知識がかえって災いした。鶏卵や牛乳や牛肉が滋養であるという知識で、そんな物をわざわざ(病弱な)私に食べさせようとして努力した。
 このことを私は改めた。もちろん病床に伏した当時、味噌汁に対してそれほど信念と知識があったわけではない。ただ私は医学に絶望して、最初から食生活をやり直そうとした。そのため玄米食・野菜食・味噌汁から出発した。ことに揚げ豆腐とわかめを実とした味噌汁は、日本人の本当の要の食品であると確信した。(中略)
 昭和20年8月9日の原子爆弾長崎市内を大半灰燼にし、数万の人々を殺した。爆心地より1.8キロメートルの私の病院は、死の灰の中に、廃墟として残った。私と私の病院の仲間は、焼け出された患者を治療しながら働きつづけた。
 私たちの病院は、長崎市の味噌・醤油の倉庫にもなっていた。玄米と味噌は豊富であった。さらにわけっもたくさん保存していたのである。
 その時私といっしょに、患者の救助、付近の人びと(ママ)の治療に当たった従業員に、いわゆる原爆症が出ないのは、その原因の一つは、「わかめの味噌汁」であったと私は確信している。
 放射能の害を、わかめの味噌汁がどうして防ぐのか。そんな力が味噌汁にどうしてあるのか。私は科学的にその力があると信じている。
 もし人体実験が許されるのなら、実験してもよろしいとさえ思っている。

「味噌汁は放射能を防ぐ」という驚愕の指摘である。もちろん相関関係を因果関係として捉えるのは誤りだ。しかしながら被爆した医師の直観を侮ることもできない。いずれにせよ、放射線障害が出なかった被爆者が「味噌汁を飲んでいた」のは事実である。これをあなたや私がどう受け止めるかという問題である。更には日本人以外にも通用するかどうかを検証する必要があるだろう。

 尚、私は玄米食をお勧めしない(歯の構造に適した食べ物)。

 本当に私は、自分の生命を賭けて医学をした。今、味噌汁にたどりついた。毎朝の味噌汁である。これが健・不健の鍵と思う。
 道は爾きにあり、之を遠きに求む。道は易きにあり、之を難きに求む、という。道は近きにあり、須臾(しゅゆ)も離るべから、離るべきは道に非ず、という。人生の鍵はそこにある。

 うるさいようだが正確には「事は易きにあり」である(孟子+狂言記)。地方の小出版社のため編集の手が入ってないのだろう。

 私が「味噌汁王子」を自称するようになったのは2016年のこと。職場で振る舞った味噌汁の評判がよかったことに由来する。爾来(じらい)、研究と工夫を重ねてきた。

 では、味噌汁の作り方を開陳しよう。まず、決め手となる味噌は出汁入りではない500円以上のものを使いたい。メーカーによって容量はまちまちだが500円で見当をつければ間違いない。「高い」と感じる人も多いと思うが、自動販売機の清涼飲料水をやめて味噌に投資すべきだ。できれば生味噌が望ましい。見分け方は味噌が呼吸する空気穴があるかどうか。これを一般的には「生きた味噌」(発酵が進んでいる味噌)と称する。

 次に具材は3種類以上用意するのがコツである。具材からの出汁(だし)が出て美味しくなる。最初は味噌の味を確認するために顆粒出汁などは入れない方がよい。

 具材をしっかりと煮てから火を止める。煮立った鍋に味噌を直接入れてしまうと風味を失う。器に味噌を入れて鍋の湯を加えて溶かす。味が整うまで繰り返す。決して薄めの味つけにしてはいけない。「塩分が体に毒」というのは迷信だ(食塩摂取量と高血圧の因果関係)。

 慣れてきたら出汁も自分で取る。昆布や煮干しを前の日の夜に水に漬(つ)けておくだけだ。私は百均の500mlボトルを使っている。

 仕上げに食べる分だけの緑豆春雨を加え、お椀(私の場合は丼だが)によそった後、ごま油を少し垂らし、大量の白ごまと七味唐辛子を加えるのが小野流である。これは好みなのでどうでもよい。私は20cmの鍋一杯に味噌汁を作り、日に丼3杯食べることを常としている。

 油揚げは切ってから冷凍保存が可能だ。また、我々味噌汁党は常に乾燥わかめ、高野豆腐、切り干し大根などの乾物や、冷凍野菜を常備しつつ、いついかなる時でも味噌汁を作ることができるよう臨戦態勢で構える。

 個人的には「道の駅へ行ったら必ず地元特産の味噌を買う運動」を起こしたいと考えている。

 納豆と味噌汁は日本最強のサプリメントである。

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